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アステラス製薬に転職したい人のための企業分析

アステラス製薬に転職したい人のための企業分析
※この記事は2023年3月期決算の情報に基づきます。
がんや泌尿器領域に強みを持ち、細胞医療や遺伝子治療の研究開発を重点的に行っているアステラス製薬。本記事ではアステラス製薬の「成長性」「強みを持つ領域・モダリティ」「将来性」の3つに焦点を当て、企業分析を行った。それぞれの項目について、グラフを用いて述べていきます。

(1)アステラス製薬の成長性

アステラス製薬の売上高、営業利益の5年間推移

アステラス製薬の5年間(2018~2022年度)の売上高と営業利益を、決算情報(*1)~(*5)をもとに下のグラフにまとめた。なお、2023年度はアステラス製薬の決算情報(2023年3月期)で報告された業績予想である。
アステラス製薬の売上高、営業利益の5年間推移
アステラス製薬の売上高、営業利益の5年間推移
※23年度は予想

売上高の推移から、2018年度から2022年度の5年間はほぼ横ばいであることが読み取れるが、2022年度の売上高は1兆5,186億円で2021年度の1兆2,962億円と比較して17.2%の増収となった。一方、営業利益は減少傾向にあり、特に2018年度の2,439億円から2022年度の1,330億円と約半分にまで減少した。しかしながら、アステラス製薬の決算情報によると2023年度は売上高が1兆5,200億円と横ばい予想であるのに対し、営業利益は2,880億円と倍増が予想されている。これは「イクスタンジ」や「パドセブ」の好調によるためであると報告されている。2022年度も「イクスタンジ」や「パドセブ」は好調であったが、腎性貧血治療薬「エベレンゾ」の将来計画見直しや遺伝子治療薬の開発中止などによる減損損失もあり、営業利益は増加しなかった。

アステラス製薬の地域別売上高の5年間推移

アステラス製薬の5年間の地域別売上高を下のグラフにまとめた。
アステラス製薬の5年間の地域別売上高
アステラス製薬の5年間の地域別売上高
日本国内での売上が2018年度は全体の28.3%であったが、2022年度は17.3%に減少している。これは、日本は高齢化が進み、財政状況が厳しい等の理由で医療費の抑制強化を行っており、薬価改定による国内医薬品市場が後退していることが原因と考えられる。この背景により、国内製薬企業は海外展開を加速させている。アステラス製薬では特に米国での売上が伸びており、2018年度は全体の32.3%であったが、2022年度は43.0%に増加した。この結果から、アステラス製薬は世界の医薬品市場の4割を占める米国への進出を加速させていることがわかる。

(2)アステラス製薬が強みを持つ領域・モダリティ

アステラス製薬の領域別の製品数と売上高

アステラス製薬の2022年度における領域別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
アステラス製薬の領域別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高
アステラス製薬の領域別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高
※売上が100億円以上の製品をまとめた

アステラス製薬が最も売上を上げている領域は、がん領域であり、その9割ほどを占めるのが最主力製品である前立腺癌治療剤「イクスタンジ」で売上が6,611億円だった。次いで泌尿器系、免疫疾患となる。泌尿器系では過活動膀胱治療薬「ベタニス」、免疫疾患では免疫抑制剤「プログラフ」が多くの売上を上げている。グラフから、アステラス製薬は特にがん領域で売上をあげており、泌尿器系領域に強みを持つことがわかる。

アステラス製薬のモダリティ別の製品数と売上高

アステラス製薬の2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
アステラス製薬のモダリティ別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高
アステラス製薬のモダリティ別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高
※売上が100億円以上の製品をまとめた

アステラス製薬の主要製品のモダリティは低分子だった。次いで、抗体が多かった。特にがん領域や泌尿器系領域では低分子が多かった。グラフから、アステラス製薬は低分子創薬に強みがあることがわかった。一方で、現在アステラス製薬は遺伝子治療をPrimary Focusとしており、遺伝子治療薬や抗体の開発に注力している。

アステラス製薬の主力3製品の売上高の5年間推移

アステラス製薬が開発した製品の中で最も売上を上げているのは「イクスタンジ」、次いで「プログラフ」「ベタニス」だ。これら3つの製品を主力3製品とした場合、アステラス製薬の成長は主力3製品の売上高の増加に大きく依存していると考えられ、主力3製品の過去5年間の売上高推移をグラフにした。
アステラス製薬の主力3製品の過去5年間の売上高推移
アステラス製薬の主力3製品の過去5年間の売上高推移
最主力製品の「イクスタンジ」の売上が順調に伸びていることが読み取れ、特に2022年度の売上高増加の大きな要因となった。ほかの主力製品である「ブログラフ」や「ベタニス」の5年間の売上高には大きな変化はなかった。また、全体の売上高に占める主力3製品の割合は半分以上を占め、これらの売上が好調かどうかがアステラス製薬の売上高に大きく影響を与えていると考えられる。そのような状況の中、売上高全体の44%を誇る「イクスタンジ」の特許が2027年に切れる見込みである。この特許切れによるパテントクリフの克服がアステラス製薬の今後の大きな課題であり、パテントクリフを乗り越えるには新薬の開発が重要である。

(3)アステラス製薬の将来性

アステラス製薬の国内開発パイプライン数

アステラス製薬の将来性を評価するため、国内開発パイプライン数を調べた。下に現時点(2023年7月)でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数(*6)をまとめたグラフを示す。
アステラス製薬の国内開発パイプライン数
アステラス製薬の国内開発パイプライン数
現在申請の段階まで達している医薬品は1製品、P3は7製品ある。以上のことから、現時点で申請まで進んでいる製品が承認され、多額の売上を上げるかどうかが「イクスタンジ」のパテントクリフを克服する大きな要因になると考えられる。また、現在好調である「パドセフ」や「ゾスパタ」の継続した売上向上も重要だと考えられる。

アステラス製薬の領域別の国内開発パイプライン数

続いてアステラス製薬が現在注力している領域を調べるため、2023年7月でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数を領域別でまとめた。そのグラフを下に示す。
アステラス製薬の国内開発パイプライン数(領域別)
アステラス製薬の国内開発パイプライン数(領域別)
現時点で申請、P3段階まで進んでいる8つの製品すべて、がん領域であり、P3の7製品は前立腺がん治療剤の「イクスタンジ」や膀胱がん、尿路上皮がん治療薬の「パドセブ」、骨髄性白血病治療薬の「ゾスパタ」の適応拡大だった。新規有効成分として胃がんの抗体医薬品「ゾルベツキシマブ」が日本で今年の6月、米国で7月に申請受理された。「イクスタンジ」のパテントクリフを攻略するには、「ゾルベツキシマブ」が承認され、大型の医薬品となるかどうかが今後注目される。

アステラス製薬のモダリティ別の国内開発パイプライン数

最後に武田薬品工業が現在注力しているモダリティを調べるため、2023年7月でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数をモダリティ別でまとめた。そのグラフを下に示す。
アステラス製薬のモダリティ別の国内開発パイプライン数
アステラス製薬のモダリティ別の国内開発パイプライン数
現時点で申請段階まで進んでいるのは抗体で1つ、P3まで進んでいるのは低分子が最も多く5つ、次いで抗体が2つだった。P3段階までは達していないが、希少疾患であるミオパチーの治療薬としてアデノ随伴ウイルスを用いた遺伝子治療や、再生医療のモダリティとして細胞医療などにも現在力を入れている。

まとめ

成長性
  • 売上高は5年間ほぼ横ばい。
  • 米国への売上を特に伸ばしている。
強みを持つ領域・モダリティ
  • がん領域で最も売上を上げている。次いで泌尿器系で多くの売上を上げている。
  • 低分子に強みを持つ。抗体医薬品も有している。
  • 売上高全体の約4割を「イクスタンジ」が占めるが、2027年に特許が切れる。
将来性
  • 「ゾルベツキシマブ」が承認され、大型の医薬品となるかどうかが今後注目される。
  • アデノ随伴ウイルスを用いた遺伝子治療や、細胞医療などにも力を入れている。

この記事について

この記事は、クリニファー株式会社のインターンシップ社員が企業ホームページのIR資料などを独自に調査し、執筆した記事になります。


出典

*1 アステラス製薬[4503]:2019年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結) *2 アステラス製薬[4503]:2020年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結) *3 アステラス製薬[4503]:2021年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結) *4 アステラス製薬[4503]:2022年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結) *5 アステラス製薬[4503]:2023年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結) *6 アステラス製薬[4503]:2023年3月期 決算補足資料

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