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外資系の大手製薬5社に転職したい人のための企業分析

外資系の大手製薬5社に転職したい人のための企業分析
外資系の大手製薬5社に転職したい人のための企業分析
※この記事は2023年3月期決算の情報に基づきます。
国内の製薬企業で最も売上高が高いのは武田薬品工業ですが、世界では11位であり、海外には武田薬品工業の数倍以上の売上高を誇る企業も存在します。今回は外資系の大手製薬企業トップ5社の治療領域、モダリティの分析を通して、5年間の売上高推移を分析していきます。

外資系の大手製薬5社と武田薬品工業の5年間売上高推移

外資系の大手製薬5社(ファイザー、ロシュ、メルク、アッヴィ、ジョンソンエンドジョンソン)と武田薬品工業の5年間の売上高推移をグラフにまとめた(それぞれ公式HPの決済情報を参照)。以下にそのグラフを示す。
外資系の大手製薬5社(ファイザー、ロシュ、メルク、アッヴィ、ジョンソンエンドジョンソン)と武田薬品工業の5年間の売上高推移
外資系の大手製薬5社(ファイザー、ロシュ、メルク、アッヴィ、ジョンソンエンドジョンソン)と武田薬品工業の5年間の売上高推移
2022年度の売上高は1位がファイザー、2位ロシュ、3位メルク、4位アッヴィ、5位J&J、11位武田薬品工業という結果だった。ここからは海外5社それぞれについて、それぞれが注力する治療領域や開発モダリティなどの企業分析を行ったうえで、5年間の売上高推移について分析していく。

ファイザー

治療領域

ファイザーといえば新型コロナワクチンを連想する通り、感染症領域に強みを持つ。ファイザーの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
ファイザーの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
ファイザーの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

ファイザーが最も売上をあげている領域は感染症領域であり、次いでがん領域、血液疾患領域となった。感染症領域3製品のうち、2製品は新型コロナウイルス関連製品であり、最も売上を上げたのは新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」の378億ドル(日本円で5兆1,000億円)だった。次いで新型コロナウイルス治療薬「パキロビッド」が189億ドルを売り上げた。
以上のことから、ファイザーは感染症領域に強みを持ち、特に新型コロナ関連製品で総売上高の半分以上を占めていることがわかる。

モダリティ

ファイザーの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
ファイザーの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
ファイザーの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

ファイザーの主要製品のモダリティは低分子が最も多かった。売上はワクチンが最も高いが、これは新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」がほとんどを占めていた。低分子の中で最も売上を上げたのも新型コロナウイルス関連製品であり、経口治療薬の「パキロビッド」だった。
以上のことから、ファイザーは低分子創薬やワクチンに強みを持ち、特に新型コロナウイルス関連製品の開発に強みを持つことがわかる。

5年間の売上高推移

ファイザーは2020年度に売上が落ち込み、世界2位から4位に後退した。しかし、感染症領域や低分子、ワクチン開発の強みやノウハウを活かして新型コロナウイルス関連製品を開発したことで一気に売上を伸ばした。2022年度までの2年間で売上高が2倍以上になり、総売上高は1,000億ドル(日本円で13兆5,000億円)を超えた。
以上のことから、ファイザーは新型コロナウイルス関連製品で大幅な成長を達成した企業であることがわかる。

ロシュ

治療領域

ロシュは幅広い治療領域で医療に貢献する世界有数の企業であり、中外製薬と戦略的なアライアンスを結んでいる。ロシュの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
ロシュの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
ロシュの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

ロシュが最も売上をあげている領域はがん領域であり、次いで神経領域、血液疾患領域となった。がん領域では最多の7製品を有しており、モノクローナル抗体の「パージェタ」や「テセントリク」がある。全治療領域の中で最も売上を上げたのは、神経領域の多発性硬化症治療薬「オクレバス」で63億ドルだった。他にも血液疾患領域の「ヘムライブラ」や免疫疾患領域の「アクテムラ」など、多くの売上を上げている製品を数多く有していた。
以上のことから、ロシュは多くの製品、幅広い領域で高い売上を誇り、特にがん領域に強みを持つことがわかる。

モダリティ

ロシュの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
ロシュの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
ロシュの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

ロシュの主要製品のモダリティは抗体が最も多かった。多くの売上を上げている「オクレバス」や「パージェタ」、「テセントリク」、「ヘムライブラ」はすべてモノクローナル抗体であり、他にもがん領域の治療薬のほぼすべてが抗体医薬品だった。医薬品売上の約9割を抗体医薬品が占めた。
以上のことから、ロシュは抗体医薬品に強みを持つことがわかる。

5年間の売上高推移

ロシュの売上高は2018年度から2022年度の5年間は比較的安定して伸びていることがわかる。これは、がんや神経、血液領域など幅広い領域で高い売上を上げる製品を有しているためだと考えられる。
以上のことから、ロシュは今後も安定して売上を伸ばしていく企業であると考えられる。

メルク

治療領域

メルクはがん関連製品の売上高世界1位である「キイトルーダ」を有し、がん領域に強みを持つ企業である。メルクの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
メルクの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
メルクの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

メルクが最も売上をあげている領域はがん領域であり、次いで感染症領域となった。がん領域では免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」が209億ドルを上げ、総売上の35%を占めた。感染症領域ではHPVワクチンの「ガーダシル」や新型コロナな治療薬「ラゲブリオ」が多くの売上を上げた。
以上のことから、メルクはがん領域や感染症領域に強みを持つことがわかる。

モダリティ

メルクの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
メルクの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
メルクの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた。

メルクの主要製品のモダリティは低分子が最も多かったが、抗体やワクチンなどの生物学的製剤、中分子など多種のモダリティを有していた。売上は抗体が最も多く、これはモノクローナル抗体「キイトルーダ」によるものだった。
以上のことから、メルクは低分子からバイオ医薬品まで多様なモダリティの創薬に強みを持つことがわかる。

5年間の売上高推移

メルクの売上高は2018年度から2021年度の4年間は緩やかに伸びていたが、2021年度から2022年度の1年間で売上がさらに伸び、世界3位となった。これは、同期間で販売が開始された経口コロナ治療薬「ラゲブリオ」による影響が大きいと考えられる。
以上のことから、メルクはがん領域と感染症領域を軸に今後も安定して成長していく企業であると考えられる。しかし、「キイトルーダ」の特許が早くても2028年に切れる見込みで、バイオシミラーの参入による売上高低下が懸念される。

アッヴィ

治療領域

アッヴィは売上高世界1位(コロナ関連製品は除く)で関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患治療薬「ヒュミラ」を有し、免疫疾患領域に強みを持つ企業である。アッヴィの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
アッヴィの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
アッヴィの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

アッヴィが最も売上をあげている領域は免疫疾患領域であり、次いで血液がん領域となった。免疫疾患領域ではヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」が212億ドルを上げ、総売上の36.6%を占めた。
以上のことから、アッヴィは免疫疾患領域に特に強みを持つことがわかる。

モダリティ

アッヴィの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
アッヴィの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
アッヴィの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

アッヴィの主要製品のモダリティは低分子が最も多かった。売上は抗体が最も多く、これはモノクローナル抗体「ヒュミラ」によるものだった。
以上のことから、アッヴィは低分子や抗体医薬品の創薬に強みを持つことがわかる。

5年間の売上高推移

アッヴィの売上高は2019年度から2021年度の3年間で顕著に伸び、現在は世界4位である。これは、「ヒュミラ」の好調とアイルランドのヘルスケア企業アラガン社を買収したことによるものである。しかし、アッヴィの主力製品「ヒュミラ」のバイオシミラーが2023年から上市されることから売上が減少することが予想される。

ジョンソンエンドジョンソン

治療領域

ジョンソンエンドジョンソン(J&J)は医薬品だけでなく医療機器の開発も行っているトータルヘルスケアカンパニーである。J&Jの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
J&Jの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
J&Jの2022年度における領域別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

J&Jが最も売上をあげている領域は免疫疾患領域であり、次いでがん領域となった。免疫疾患領域では乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」が97億ドルを売り上げ、がん領域では多発性骨髄腫の治療薬「ダラザレックス」が80億ドルを売り上げた。また、感染症領域では新型コロナウイルスワクチンが22億ドルを売り上げた。J&Jは幅広い治療領域で多くの製品を有している点も特徴として読み取れる。
以上のことから、J&Jは免疫疾患領域やがん領域に強みを持つことがわかる。

モダリティ

J&Jの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。
J&Jの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
J&Jの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上10億ドル以上の製品数)と売上高
※売上が10億ドル以上の製品をまとめた

J&Jの主要製品のモダリティは低分子が最も多かった。売上は抗体が最も多く、これはモノクローナル抗体「ステラーラ」や「ダラザレックス」によるものだった。
以上のことから、J&Jは低分子や抗体医薬品の創薬に強みを持ち、多くの製品を有していることがわかる。

5年間の売上高推移

J&Jの売上高は2018年度から2022年度の5年間は安定して伸びていることがわかる。これは、がんや免疫疾患、感染症など幅広い領域で多くの製品を有しているためだと考えられる。
以上のことから、J&Jは今後も安定して売上を伸ばしていく企業であると考えられる。

まとめ

今回は外資系の大手製薬5社の企業分析を行った。下に簡単にまとめる。
ファイザー
  • 感染症領域に強みを持ち、特に新型コロナ関連製品で総売上高の半分以上を占めている
  • 低分子創薬やワクチンに強みを持ち、特に新型コロナ関連製品の開発に強みを持つ
  • 新型コロナ関連製品で一気に成長。総売上高は1,000億ドルを超え、世界1位
ロシュ
  • 多くの製品、幅広い領域で高い売上を誇り、特にがん領域に強みを持つ
  • 抗体医薬品に強みを持ち、医薬品売上の約9割を占める
  • 今後も安定して売上を伸ばしていくことが予想される
メルク
  • がん領域や感染症領域に強みを持つ
  • 低分子からバイオ医薬品まで多様なモダリティの創薬に強みを持つ
  • 総売上35%を占める「キイトルーダ」の特許が早くても2028年に切れる見込みで、バイオシミラーの参入による売上高低下が懸念される
アッヴィ
  • 免疫疾患領域に特に強みを持つ
  • 低分子や抗体医薬品の創薬に強みを持つ
  • 「ヒュミラ」の好調とアラガン社の買収で成長。しかし、「ヒュミラ」のバイオシミラー上市により売上が減少することが懸念される
J&J
  • 免疫疾患領域やがん領域に強みを持つ
  • 低分子や抗体医薬品の創薬に強みを持ち、多くの製品を有している
  • 今後も安定して売上を伸ばしていくことが予想される
外資系の大手製薬5社の企業分析を通して、海外の製薬企業は
  • がんや免疫疾患、感染症領域に強みを持つ
  • 抗体医薬品やワクチンなど生物学的製剤に強みを持つ
  • コロナ関連製品の開発に取り組んでいる
といった企業が多いことがわかった。

この記事について

この記事は、クリニファー株式会社のインターンシップ社員が企業ホームページのIR資料などを独自に調査し、執筆した記事になります。


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