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転職したい人のための近年研究開発が進んでいる技術

転職したい人のための近年研究開発が進んでいる技術
転職したい人のための近年研究開発が進んでいる技術
近年、AI技術の発展や普及が医療・製薬業界においても目覚ましく、Chat GPTの活用や自動ロボットを用いた業務効率化が進んでいます。
また、AIだけでなく今年度のノーベル生理学・医学賞に選ばれたmRNAワクチン技術や日本医療研究開発大賞で内閣総理大臣賞に選ばれた「DXd-ADC技術」など、様々な技術が開発されています。
そこで本記事では、医療・製薬業界の研究開発において注目されている技術を調べ、まとめました。

医療・ヘルスケア

医療・ヘルスケア業界は、高齢化率が年々高くなっている日本で近年注目を集めており、拡大し続けています。経済産業省の発表では、業界規模が2013年の16兆円から2025年には33兆円と倍以上に成長すると予測されています[1]。
医療・ヘルスケア業界では、AIを用いた画像診断技術や、使用者の体調をリアルタイムで記録し管理できるウェアラブルデバイスなど、AI技術やビッグデータ、医療IoTが発展・普及しており、これらが業界の拡大を後押ししていると考えられます。ここからは具体的に、開発が進んでいる技術を紹介していきます。

AI医用画像解析技術

主に内視鏡やCT、MRIなどの画像診断に用いられる技術です。これまではがんなどの病変部を内視鏡やCT、MRIなどで撮影した画像を医師が見て良性か悪性かを判断していました。しかし、画像が白黒であったり、腫瘍の良性・悪性の区別できなかったりなど問題がありました。そこで、X線やCT、MRI画像をAIが解析し、マーキングする技術や、内視鏡検査中にAIがリアルタイムで画像を解析し、医師の診断をサポートする内視鏡AI診断支援技術が開発されています。例えば、シーメンスヘルスケアが提供する「AI-Rad Companion Brain MR」は頭部MR画像から脳の各部位をAIが自動的にマーキングして分割し、部位ごとに異常のリスクを解析します。オリンパスが提供する内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN」は大腸内視鏡検査中の画像をAIが解析し、ポリープ・がんなどの病変候補を検出するとリアルタイムに音と画面上の色で警告し、検出位置を枠で表示します。
AI-Rad Companion Brain MR [2]
AI-Rad Companion Brain MR [2]
EndoBRAIN [3]
EndoBRAIN [3]

ゲノム医療(がん遺伝子パネル検査とAI)

がん患者の遺伝子変異を明らかにすることで、病気のなりやすさ、薬の反応性や副作用などを予測して、患者ごとに最適な医療を提供することを目的としている技術です。現在はがんに疾患すれば、そのがん種を対象にした抗がん剤を投与するのが普通です。しかし、その抗がん剤による副作用の種類や程度は人それぞれであり、実際に効くかどうかも投与してみないことにはわからないといった課題があります。そこで、がん遺伝子パネル検査により患者の遺伝子変異を一度で一気に解析し、その結果をもとにAIが遺伝子そのものを標的にした治療の提案や患者特有の体質を解明することで、薬が効くかどうかや副作用の予測が可能になると考えられています。人の遺伝子情報は膨大なデータであることから、これまではその解析は困難でしたが、ビッグデータやAIの発展により、それが可能になりつつあります。例えば、中外製薬が提供している「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」はがんに関連する324の遺伝子の変異を検出することができます。AIによる分子標的薬やその他の治療法の提案にはまだ課題がありますが、患者個々人に対する治療効果の最大化・副作用の最小化を可能にする個別化医療の実現には不可欠な技術です。
遺伝子パネル検査のしくみ [4]
遺伝子パネル検査のしくみ [4]

リキッドバイオプシー

血液を採取してその中に染み出てきているがん細胞由来の遺伝子の配列を調べ、有効薬剤を探索したり、より正確な診断をしたりする検査技術です。
これまでは、病変部の一部を手術や内視鏡などで採取した後に顕微鏡でその病変について調べていました。しかし、患者への身体的な負担の大きさや病変部位によっては採取が困難であるといった課題がありました。リキッドバイオプシーは血液など体液から、患者の病気の有無や性質を調べる技術で、患者に対する身体的負担が小さいことや何度も検査ができるという特徴があります。上述したがん遺伝子パネル検査と組み合わせることで、患者ごとに最適な医療の提供やQOLの向上が可能になります。検査業界の大手であるシスメックスなどがリキッドバイオプシー技術の開発に力を入れています。
生検・組織検査とリキッドバイオプシーの違い [5]
生検・組織検査とリキッドバイオプシーの違い [5]

ウェアラブルデバイス

体の一部に身に着けることで、リアルタイムで生体情報を記録・管理できるデバイスのことです。心拍や心電図、血糖値と高い相関関係にあるグルコース値などをリアルタイムで測定し、グラフで記録していきます。通常、私たちは体調が優れず病院に行ったとき、医師に自身の状態を口頭で伝えます。しかし、医師は患者の状態を正確に把握できない、リアルタイムでの患者の体調の変化を知ることができないために正確な診断ができないといった課題があります。そこで、ウェアラブルデバイスによりリアルタイムで測定した生体情報を医師に診てもらうことができれば、医師はその情報から患者の体の変化を客観的に読み取ることができ、正確な診断ができるといったメリットがあります。また、糖尿病患者は一日に数回、自分で血糖値を測定して管理する必要があり、身体的負担や測り忘れによる命の危険が常に付きまといます。メドトロニックが開発した「インスリンポンプ」はインスリンを持続的に注入する小型のポンプであり、2~3日に一度針を刺すだけでインスリンを注入することができます。加えて、患者のグルコース濃度をリアルタイムに測定し、データを記録・管理することができます。低血糖や高血糖になればアラートで患者に知らせることも可能です。
インスリン療法の仕組み[6]
インスリン療法の仕組み[6]

手術支援ロボット

鉗子やカメラなどを医師が直接的に操作するのではなく、ロボットアームに付いた鉗子などを、遠隔操作することで手術ができるロボットです。医師はコンソールボックスというコックピットのような操作ボックスの中に座り、3D画像を見ながらロボットアームを沿革操作して手術を行います。手術支援ロボットは内視鏡下外科手術ですが、従来の内視鏡を用いた外科手術よりも操作性に優れており、医師が手術しやすく疲れにくいといったメリットがあります。患者側にも出血が抑えられたり、傷跡が小さく少なく済んだり、臓器を全摘出するのではなく病変部のみを取り除くことで機能を保存できたりといったメリットがあります。有名な手術ロボットには「ダヴィンチ」や、株式会社メディカロイドが開発した、国内初の手術支援ロボット「hinotori」があります。
国産手術支援ロボ「hinotori」[7]
国産手術支援ロボ「hinotori」[7]

創薬

創薬技術においてもAIが進出しています。近年では、標的探索(ターゲット選定)やリード化合物の探索・最適化のフェーズにAIを応用するAI創薬の導入が進んでいます。AIの他には第一三共が開発した抗体薬物複合体「ADC」やmRNAを用いた医薬品やワクチン開発などが進んでいます[8]。ここからは具体的に、開発が進んでいるこれらの技術を紹介していきます。

AI創薬

AI創薬とは、医薬品の研究開発のプロセスにAIを活用した創薬のことで、製薬会社が所有する大量の化合物ライブラリーを処理・分析し、更には推論することで標的探索やリード化合物の探索・最適化を助けます。AI創薬が注目されている背景に、これまで多くの医薬品が開発されてきたことによる新しい医薬品開発の難易度増加があります。また、合成した化合物が実際に効くかどうかは研究者の勘であり、手あたり次第に大量の化合物の実験を行わなければならないといった課題があります。そこで、AIを用いた創薬を行えば、これまで人間が気づかなかった新しい視点から化合物探索をアプローチできるようになります。加えて、AIが大量の化合物ライブラリーを処理・分析し、ネット上に存在する論文等を参照することで、標的化合物を推論し、絞り込めるようになります。新薬候補化合物をAIを用いて探索していくことで、新薬開発期間の大幅短縮、それに伴うコストの削減、更には継続的な新薬の創出が可能になります。特に中外製薬がAI創薬に力を入れており、製薬業界全体から非常に注目されています。

ADC(抗体-薬物複合体)

ターゲットとするがん細胞に特異的に結合できる抗体に、殺細胞性抗がん剤などの低分子医薬を結合させた薬剤のことです。抗体がターゲットであるがん細胞を認識して結合し、抗がん剤を届けることでがん細胞を攻撃します。ADCの大きな特徴は、治療したいがん細胞にピンポイントに薬剤を届けることができる点であり、抗がん剤治療による副作用の軽減が可能となります。また、抗体と薬物の組み合わせを変えることで、異なる複数の疾患への治療効果が期待されています。ADC技術は第一三共が開発した技術であり、医療分野の研究開発推進に貢献した功績を称える「第6回日本医療研究開発大賞」において、極めて顕著な功績が認められる内閣総理大臣賞に選出されました。
抗体薬物複合体(ADC)[9]
抗体薬物複合体(ADC)[9]

mRNAワクチン

新型コロナウイルスワクチンとして一躍有名になったワクチンの種類で、このmRNAは新型コロナウイルスの外側にあるスパイクたんぱく質を作り出す設計図となります。このmRNAを投与することで、体内でスパイクたんぱく質が作られ、それを異物だと認識したB細胞が抗体を生み出すことで免疫を獲得する仕組みです。従来のワクチンは生ワクチンや不活化ワクチンと呼ばれるものであり、対象とするウイルスを弱毒化・不活化させたのちに体内に入れることで免疫を獲得する仕組みでした。これらワクチンに含まれるウイルスの弱毒化や不活化、加えてその弱毒化・不活化させたウイルスの大量生産にはかなりの時間を要するため、一刻も早く大量に新型コロナウイルスワクチンを開発しなければならないという状況の中では適さないという課題がありました。そこで、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質を作る設計図であるmRNAだけを開発し、そこから免疫を獲得するまでの流れは体内に任せるという方法をとることができるmRNAワクチンが注目されました。mRNAワクチンは開発スピードが短く、大量に生産できたため、世界中の人々を救ったワクチンとなりました。今年のノーベル生理学・医学賞にはmRNAワクチンの開発につながる基礎技術を開発した教授らが受賞しています。
mRNAワクチンの仕組み [10]
mRNAワクチンの仕組み [10]

まとめ

本記事では、医療・製薬業界において近年研究開発が進んでおり、注目されている技術について紹介しました。特にAI技術は医療ヘルスケア、創薬の両方の分野で注目されており、これまで治せなかった病気の治療や、体への負担を最小限に抑えた治療などの実現が可能になるかもしれません。AIを搭載した医療機器の開発やAI創薬など、AIを活用した技術の研究開発がますます加速していき、私たちが健康で豊かな生活を送れるようになることを期待しています。

この記事について

この記事は、クリニファー株式会社のインターンシップ社員が企業ホームページのIR資料などを独自に調査し、執筆した記事になります。


[1] 経済産業省|令和2年度補正遠隔健康相談事業体制強化事業(医療・ヘルスケアにおけるデジタル活用等に関する現状及び調査事業)、令和3年3月、pp.36 [2] Siemens Healthineers|AI-Rad Companion-マルチモダリティ環境下において画像診断をサポート [3] オリンパス|AIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN-Plus」を発売 [4] 中外製薬|おしえて がんゲノム医療 [5] シスメックス|リキッドバイオプシーと遺伝子検査 [6] メドトロニック|インスリンポンプ療法とは|糖尿病 治療法 [7] 森山和道、“川崎重工、国産手術支援ロボ「hinotori」 ダビンチの半額”、Impress Watch、2022年3月22日 [8] 遺伝子治療市場規模、シェア、動向 |業界レポート [2030]、Fortune Business Insights [9] 株式会社カイオム・バイオサイエンス|新パイプラインPCDC(ヒト化抗CDCP1モノクローナル抗体)のご紹介 [10] 京都府ホームページ|特集2 新型コロナウイルス感染症情報 知っておきたいワクチンのこと

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